第二の出会い

津軽三味線

高橋竹山のレコードとの出会い

20歳で自分は結婚し毎年家族で女房の実家である山形まで夏休みに1週間ほど帰省していた。そんなある時に女房の親父さんが民謡の好きな人で津軽三味線の名人と言われた「高橋竹山」のレコードを持っていた。暇に任せてそのレコードを聴いてみた。”デデーンデンデン、ツクテンテンテン…” 横浜生まれ横浜育ちのいわゆる都会人の自分にとっては今までに聞いた事がない音だった。これが第二の津軽三味線との出会いとなる。

これによってギターから津軽三味線へと趣向が方向転換をすることになる。然しフラメンコギターと津軽三味線とは非常に似通ったところがありフラメンコはスペインのアンダルシ地方のジプシー民謡。かたや津軽三味線は青森県津軽地方だけに伝わる文化でフラメンコとは良く似ているのだ。だから津軽三味線という世界はすんなり自分に入ってきた。

■結局10代の頃から始めたギターも26,7歳くらいまで続けていたがその後好きだったギターもぱたりとやめてしまう。

やめてしまった理由と言うのは当時自分の仕事はトラックで重い印刷用紙を市内の印刷所に運ぶ仕事をしていてギターを弾く為の指の爪がしょっちゅう欠けてしまう事態が起こった。フラメンコギターはピックを使わず自分の爪で弾くから度々爪が割れてしまうのもギターが嫌になる理由の一つになった。然し津軽三味線はバチを使うので爪を伸ばす必要がなかった。

津軽三味線を習う

山形で聞いた竹山のレコードに感動して横浜に戻るやいなや早速に電話帳から琴や三味線を扱う和楽器店に電話をして横浜で津軽三味線を教えてくれる教室はないかと訪ねた。当時私が26歳で未だ若い20歳のある流派の名取さんを紹介してくれた。そこで早速に中古の三味線を10万円で購入し習い始めた。

音感と耳の良し悪し

弦楽器を演奏するには先ず調律をしなければならない。三味線の3本の糸はド、ソ、ドの3つの音階から構成されている。一番太い糸はピアノの鍵盤でC#の音階で真ん中がソ、一番細い3番目の絃は1オクターブ上のドになっている。

自分はギターをやっていたお陰もあって三味線の調律も直ぐに会得して先ずは宮城県の平(ひら)もの民謡で斎太郎節を習い始めた。最初から津軽じょんから節という訳にはいかないので単純な指使いを覚える為に平易な曲からスタートしたのである。

歌でも楽器でもそうだが上達するには耳の悪いつまり音痴な人はやはりうまくならない。これは楽器の調律においても微妙な音の差が聞き分けられないと完全な音合わせが出来ない為だ。絶対音感のある人はドアの開け閉めで発生する音もピアノでいうどの音階か聞き分けられると言う。

ヨナ抜き節

この写真はアメリカ人のカイルアボットという青年がアメリカでバチ道という津軽三味線を指導している仲間達の写真だ。写真の真ん中で寝そべっている青年がカイルアボットだ。カイルの家族は音楽ファミリーでカイルは自ら三味線本体を製作してアメリカで販売している人で日本文化に対する造形が深い。この様に現代では津軽三味線はヨーロッパ、アメリカにも深く浸透しており日本の文化が親しまれている。

何故これほどまでに独特な日本の三味線音楽が親しまれているのかと言えば日本独特の「ヨナ抜き音階」にある。この「ヨナ抜き音階」とは西洋音階であるドレミファソラシドの8音階から4度のソと7度のシを抜いた音楽が日本の民謡であり童謡、演歌なのだ。

つまりアメリカ人やヨーロッパの若者達に西洋には無い日本音階の独特な曲が気に入られる様になってきているのだ。津軽三味線の津軽じょんから節もしかり、また日本人に親しまれてる演歌もそうだ。この「ヨナ抜き音階」から出来ているので演歌などはどれも似たり寄ったりの曲調になっている。また演歌だけでなくユーミンの「春よ来い」太田裕美のヒット曲「木綿のハンカチーフ」キャリパミュの「つけまつける」も「ヨナ抜き音階」から出来ている。今や日本の食文化だけでなく日本の音楽も世界の人達に愛される時代なのだ。

1を聴いて10を知る

さて話はそれてしまったが「1を聴いて10を知る!」という事について話をしてみよう。私が津軽三味線を習い始めて会得した事だが皆さんも何かを習う時最初に覚える1の内容を徹底的に時間をかけて稽古勉強する事が肝心だ!

最初に1の事を未だ完全に習得する前に気が早って次の事に手を出してしまうと結局のところ習得が遅くなってしまうという事になる。つまり一番の基礎学習をおろそかにしないという事だ。最初に習う勉強する事をしっかりやっておくと次に習う事はすんなりと分かる様になる!これが1を聴いて10を知る!という事だ。

津軽民謡には5大民謡というのがある。代表的なのが「津軽じょんから節」「津軽小原節」「津軽よされ節」これが津軽三つものと言われている。それに「津軽あいや節」「津軽三下り(さがり)」という曲が加わって津軽5大民謡と言う。津軽じょんがら節といえば題名だけでも広く世間一般の人にも知られている曲だ。私はこのじょんから節をじっくりと基礎を学びリズムを覚えていった。

これによって2曲めの津軽あいや節はすんなりと短時日で体で習得すことが出来たのである。こうして他の楽曲も早いうちにマスターしていき師匠の代稽古まで務めることになる。

この方法は音楽以外の勉強でも通じるところがあった。その後、音楽以外のスポーツでもパソコンソフトを覚えるのにも役立つことになる。基本は何事も同じであるという事だ。

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